別離とベーコンエッグ
夜に目玉焼き。ベーコンエッグだ。
右にあるのはハイボール。
家ではほとんど飲まないが、なんかあったときには心の起伏をアルコールの大河で埋めるあまり良くないくせがある。
数年に何回か。
心が平穏を取り戻すまでの短期間集中型だ。
ようは「稀によくある」ってやつだ。
彼女と別れた。
俺はまだ好きなんだから、振られた、が正しい。
騙し騙しだった。こうなることはなんとなく予感できてた。
・彼女の怒るポイントを、どうしてもつかめなかった。
「そういうの嫌って言ったでしょ?さー、どう言い訳する気なの?」
デートの時、急に怒り出す。
多分、俺が放った何気ない言葉が、彼女の逆鱗に触れたんだろう。
他愛のない会話のキャッチボールだと俺が思ってしまっている以上、え、どこが嫌だったの?という感覚に陥ってしまっていた。
それを聞きかえす事もできず、どこが嫌だったんだ?
何を言われたのが癇に障ったんだ?と考えている時間、彼女の機嫌は更に更に悪くなっていく。
俺視点でこんなこと書くと、彼女の気持ちを慮れてないのがわかる。
で、今でも結局わかっていない、この事実は重いかも知れない。
会うたびに、向こうが怒らないための会話ばっかり考えてた。萎縮していた。
マトモな会話にならない。
向こうは向こうで、自分がそうさせている、と感じてしまう。
「いつも、今日も直ってなかった、帰ったときにそう思うのが辛い。もう二人で会えない」
「私のせいでそうさせてしまうと感じるし、そうなんだと思う」
「変わってくれるって言う言葉が、もう信じられない、そうなるとは思えない」
そう言われたら、「じゃ、別れようか」となってしまう。なってしまった。
前後で、同僚(主に後輩)や友達に、俺の会話のアカンところとか聞いたりもしたんだが、どうも要領を得ない。
物理的に長い時間を一緒にいれば、慣れは発生する。
俺のアカンところも、個性として受け入れ準備ができてしまうのだろう。
彼女とは多少遠いところに住んでいたので、俺としてはソレも何らかの原因だとおもう。
「遠いところにいるから、理解度が低いんだ」って、自分への言い訳にしてたのかもな。
「別れたあとも、友達でいれる人?」
そんなこと言われて、分からん、と答えた。
少ない恋愛経験(正式に付き合った人がこの人より前に2人のみ)の中で、付き合った人にフられるのがはじめてだ。
いつもこちらから別れ話を展開し、その直後に連絡先を全削除してきた。
変な期待をもたせたら悪いと思って。
ぶっちゃけ、分からん。こっちがまだ好きなのはわかってるべ。
ただこれは後輩に聞いたところ、急に関係をぶった切ることは人間として難しい、とのこと。深い関係だった場合は特に。
優しさなのかな。むしろ別れた瞬間ぶった切れる俺が変なのか。
ただ何よりもアレなのは、一緒に住もうと思っていたマンションへの引っ越しがあと一週間となっていることだ。
あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
「彼女と住むために引っ越しようと思ったら、
いつのまにか彼女がいなかった」
な…何と言っているのか わからねーと思うが
おれも 何をされたのか わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえぜ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…
引っ越しに、必要なら手伝いに行くよ、と言われ、社交辞令なのか罪悪感からなのか、よくわからない。
まだ一週間ある。ちょっとまあ考えるか。